自閉症児の母として(13):ゲリラ豪雨のように
2013-08-13


わが家のリフォームの工事が始まった。まずは、長男モトと次男の部屋から。
二人とも、荷物と一緒にリビングで一日の大半を過ごしている。こんなときぐらい、どこかへ出かけてくれたらいいと思うのだけれど、それぞれにWiiFit やら、パソコンやら、ごたごたと持ちこんでは、騒々しく毎日のルーティンを全うしようとする。

ほんの1ヵ月ほどで、住まいがきれいになるのだから、多少の不自由は我慢できるだろうと思っていたのが、間違いだった。
まず、次男のイライラが募ってきた。舌打ちをする。グラスをガツンとテーブルに置く。ぴりぴりとした空気が流れる。
モトが過敏に察知して、とうとうその空気を吸い込んで、爆発した。
あわれ、か弱き私は、突然の爆風に吹き飛ばされて、左肩を強打……。

自閉症の彼は、本当に純粋な神経の持ち主だ。
何の保護膜もないまま、周囲の人の感情にダメージを受け、パニックを起こす。
周囲の人だけならまだしも、テレビ番組の登場人物にさえ、影響を受ける。
例えば、怒りがトレードマークのカンニングの竹山。同じく真剣勝負の星野監督。だからパニックは、いつもゲリラ豪雨のように突発的だ。


またやられてしまった。
肩が痛くて、腕が動かせない。
犠牲者が私でよかった、と思ったり、もう許さない!と思ったり……。
それにしても、掃除や片付けや荷物運びに明け暮れているこの時期に、大事な利き腕が使えなくなって、どうしてくれるの?
痛みより情けなさ、ふがいなさ。怒りよりも、あきらめ……。
毎度のパニックに、どこかで、冷静に今の気持ちを分析しようとしている自分がいる。

モトが悪いわけではないのだ。デリケートな神経が赤信号を発し、彼自身を守ろうとして、過剰防衛に入ってしまうのだろう。
パニックも、スイッチがOFFになれば、けろりと元どおりになる。
「ママ、頭突きして、ごめんなさ〜い」
天使のような声で謝罪されたら、苦笑いするしかない。
豪雨の後には、明るい虹が立つものだ。

結局、長男は、いつもの夏休みと同じように、夫が鎌倉の家に連れていった。
もっと早くそうすればよかったのだろう。
自閉症の彼は、日常生活が変化することを好まない。それでも、事情を理解して、我慢に我慢を重ねていたのだ。いろいろと用があって、延び延びになったのだが、彼のことを第一に考えてあげるべきだったかもしれない。

かかりつけの整形外科はお盆休みだった。
しかたなく、鎮痛パップ剤を買ってきて貼ったら、少し楽になる。
腕も動くようになったので、家事を再開。流し台をたわしで磨いた瞬間、また激痛が走った。ちょっとでも、手に体重をかけようとすると痛むようだ。
お盆明けには、やはり診てもらおう。

続きを読む

[エッセイ]
[自閉症]
[子育て]

コメント(全2件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット