当時、それをエッセイにつづりました。まずはお読みいただきましょう。
「心に残る」――母バージョン
ゴールデンウィークが明けた日、ひさしぶりに一人の静けさを味わっていると、次男の中学校から電話がかかってきた。
「38度5分のお熱がありまして、今保健室で休んでいるのですが……」
車を飛ばして20分後、保健室には青い顔の息子がいた。
ちょうど、アメリカ帰りの大阪の高校生が、重症になりやすい新型インフルエンザで隔離された、というニュースが日本列島を不安に陥らせていた頃だ。
保健室の先生の話では、息子のクラスにもインフルエンザの生徒が数名出ているという。
私も青くなった。中3の息子たちは、5日後に長崎への修学旅行を控えていたのである。
「でもご安心ください、B型ですから」と、先生はにこっと笑った。
恐怖の新型はA型で、学校では安心のB型というわけだ。おそらく息子もその菌をもらったのだろう。
「発熱して1日たたないと菌が出ないことがあるので、検査は明日のほうが確実かもしれませんね」
とりあえず息子を連れて帰って寝かせる。夜には40度になり、解熱剤を飲ませた。大丈夫、出発まで5日ある。諦めるにはまだ早い。
あいにく私は、翌日の午前中は自分の習い事、午後からは仕事先の年に一度の総会が控えていた。しかたがない。午前中は休むことにして、医者に連れて行こう。総会では大事なお役目もあるから休むわけにはいかない。薬を飲んで眠っているうちに出かけてこよう。
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