旅のエッセイ: 旅するアートか、アートする旅か
2023-04-25


 

私の趣味はと聞かれたら、いくつもあるけれど、小説を読むことと、美術を鑑賞することの2つは、必ず答えに入るだろう。それをダブルで提供してくれるのが、原田マハさんだ。

作家としても数かずの賞を受賞しているし、美術館のキューレーターをしていたくらいだから、芸術にも造詣が深い。天は二物を与えるのだ、といつも思ってしまう。

マハさんにはアートを題材にした小説もたくさんあるが、今手にしているのは、『原田マハの名画鑑賞術』という本。文字どおりハウツーものだ。

「日本は世界的に見ても美術館大国」と、帯には書いてある。

本書では、日本の美術館が所蔵する18人の芸術家の作品を取り上げて、鑑賞している。

 

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この本を図書館で借りて読み始めたのは、3月上旬のこと。

ちょうどその頃、夫と名古屋に1泊する予定があり、そこで何をしようかと計画をしているところだった。

タイミングよく、この本が大きなヒントをくれた。愛知県美術館にグスタフ・クリムトの絵があるというのだ。この美術館の場所をグーグルマップで調べてみると、なんと滞在予定のホテルから歩いても10分とかからない距離にあるではないか。決まりだ。


私は彼をクリムトさまと呼ぶ。大ファンである。40年前からの筋金入りのファンだというのが、私の自慢である。金を用いたモザイク模様の中に写実的な人物が描かれていて、官能的な肢体やまなざしで、見る者を引きつけてやまない。あやしい魅力がたまらないのだ。

本書で紹介されている彼の絵は、「人生は戦いなり(黄金の騎士)」。

写真からわかるのは、騎馬に乗り、鐙(あぶみ)を踏んで直立する騎士が横向きに描かれていることぐらいだ。その絵のディテールや質感がすばらしいと書いてあるのに、残念ながら8cm四方の写真からは見てとれない。

これはもう、行って本物の絵を見るしかない。

この本は半分まで読んで図書館に返却した。自分で購入して手元に置こうと思ったのだった。

 

さて当日、名古屋到着後、ホテルにチェックインしてから美術館に出向いた。


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