「150ユーロと、あとチップを少し足せばいいんじゃない」
と、私は言ったつもりだった。軽くうなずいて、彼女は店内のトイレを借りるついでに、室内で支払いもすませてテーブルに戻ってきた。
「200ユーロとチップ、渡してきた」
「え? なんで。細かいの、なかったの?」
「だって、199.5ユーロでしょ」
「ええ? 149.5よ。ほら見て」
手書きのレシートを見せた。
たしかに4ではなく9にも見える。その隣には、アルファベットのgのような数字の9があって、彼女は錯覚してしまったようだ。
どうしよう! と困り顔のHiromiさん。
満席の店内で、会計担当の従業員は忙しくてよく見ないままお札を受け取り、たくさんのお金が入ったザルのようなお皿の上に、ぽいと置いたというのだ。
「私がいくら払ったか、もう確かめられないと思う」
「大丈夫、取り返してくるから」
50ユーロは見過ごせない。日本円で8600円なり。たとえチップとしても取り過ぎだ。
私たちのテーブルの担当だったウェイターをつかまえて、手書きのレシートを見せながら、つたない英語で事情を説明した。読み間違えてごめんなさい。でも、お返しくださったら、とてもとてもうれしい、とかなんとか……。
彼は数秒考えたのち、
「50ユーロでいいんですね。OK!」
と、気持ちよく紙幣を1枚返してくれた。2人でほっと胸をなでおろした。いいお店でよかったね。
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