私がマタギという言葉を知ったのは、子どものころ、兄が読んでいた少年雑誌の漫画だった。毛皮をまとって、黒い鉄砲を持った狩人。相手は何倍もありそうな巨大な熊。血なまぐさい戦い……。そんなことぐらいしか覚えていない。
だから、以前の私ならこの本を手にとっても、けっして読んでみようという気にはならなかったろう。
〇
でも、今回は違った。直木賞の40冊を読破するという自分で決めた目標のおかげで、この本とめぐりあった。目標がなければ読まなかった本を読んだのだ。
そして、読まなければ知り得なかった世界に、とことん引き込まれた。いつの時代にも、どこの世界でも、人は生きる。……そのことに思い至るとき、読書のだいご味はそれに尽きるような気がしてくる。
思いがけない「邂逅」に感謝である。
セコメントをする