母のこと、息子のこと、仕事のこと。悩みは尽きない日々、どうも心がざわついて、エッセイが書けない。スランプだ。
時間がないわけでもないのに、ブログにも、エッセイにも、書きたいことはたくさんあるのに、書けない。
今朝、思い切って本の話を書き始めたところに、一通の郵便が来た。
通信添削の作品が届いたのだ。差出人は、鎌倉在住のもうすぐ米寿を迎える男性である。
その封筒に貼られた丸い小さな切手を見て、アッと思った。見覚えがある。
そして、パソコンに保存してある写真の中から見つけ出したのが、下の写真。2014年6月14日に、鎌倉の坂ノ下で写したものだ。力餅家という和菓子屋の脇に立つ、真っ赤なポストと濃いピンクのアジサイのあでやかなツーショット。梅雨の晴れ間の一日、宮城県東松島の友人たちが遊びに来て、鎌倉を案内したときに、思わず写真に収めたのだった。
今でもお気に入りの一枚だ。見るたびに元気が出る。
よく見ると、ポストの丸い顔の横に連なる3つの花房も、お腹の辺りの花房の寄り添い方も、切手と私の写真とはとてもよく似ている。
私のは少し盛りが過ぎた花なので、きっとこの切手は、それより数日前に撮られた写真が使われたのだろう。
だからどうしたの、と言われたらそれまでだけれど、この写真を撮ってからは、アジサイの季節ではなくても、墓参りに鎌倉に行くたび、ポストとアジサイの健在を確認してはホッとする。
だから、ちょっとうれしいのである。ともすれば、暗い気持ちに沈みがちなこのごろ、小さな切手のおかげで、梅雨の晴れ間のように私の心に陽がさした。
くだんの男性は、以前はエッセイ仲間だった。男性にしては珍しく、情感豊かなエッセイを書く。リタイアして、現在は鎌倉の老人ホームに愛するご夫人とともに暮らしている。エッセイを書くことを生きがいにしているので、その励みになるようにと、月に一度の通信添削講師を仰せつかった。
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